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ヒップホップとグローバル文化

文学部 特別聴講生 ソンスンア 2010.08.09

 

 

<目次>

 

T.序論

U.本論

1.グローバル化とは何なのか。

 2.ヒップホップとは。

   a.ヒップホップの発生起源と電波

   b.ヒップホップの種類

   c.ヒップホップと消費市場

3.グローバル文化とヒップホップ

a.ヒップホップ以外のグローバル文化の例

b.グローバル化の危険性

c.ローカルなヒップホップ

V. 結論

W.参考文献

 

 

 

T. 序論

 

2010年、21世紀が始まってからもう10年になった。現在の我々にとって、世界という言葉は重要なものの一つである。しかし、昔から国家間の交流はあった。代表的な例として、我々の服が洋服に変わったことが挙げられるが、これらは現在の国家との交流とは違い、長い時間をかけて変わっていったものだ。今はインタネット、テレビなどによって他国の状況をより素早く知り、様々な他国の文化を間接的に経験できる。このように他国との交流が、より早くできているため、それにともなう変化も早く、この変化から逃げられないことになった。この様々な変化の中で、社会の一面ともいえる「文化」も変化を逃れられなかった。本書では、現在世界の若者に広げているヒップホップという音楽文化とグローバル化を結びつけ、新しいグローバル文化の定義を下す。

 

 

U.本論

 

1. グローバル化とは何なのか

 

世界のなかで交流が多くなり、クローバル化、世界化、国際化という用語が生み出された。グローバル化、世界化、国際化という用語は同じ言葉として使う場合が多いが、それぞれの意味には、少しずつ違いがある。これから、それらの用語の差異点を述べる。

世界化はグローバル化(Globalization)と言い換えることができる。クローバル化は、全世界的で国家間の差がなく、一律的な規格、規範、価値観を通用させることである。つまり、世界がまるで一つの地球村のように国境を越えることである。

しかし、国際化(Internationalization)は、国の国境と固有性を認め、他国と交流をすることである。つまり、国境を認めることに基つき、経済、政治、文化的に様々な国家と交流をすることを意味する。現在の国際化はグローバル化の一種の過程でもいえる。ヒップホップは 国境を越えて広げた世界的なもので、一つの地球文化を作り出し、クローバル化の代表的な事例といえる。

 

 

2. ヒップホップとは

 

a.ヒップホップの発生起源と伝播

 

 ヒップホップは大衆音楽の一種類で、文化の全般の流れを指す言葉でもある。ヒップホップの発生起源には様々な意見がある。アメリカのある歌手が軍隊の行軍中、兵士たちが即興的に叫んだ“hip!hop!hip!hop!”という音から栄冠を得り、自分の曲に“hip!hop!”を入れ、それが他の音楽にも広がったという説と、1970年代のアメリカ合衆国ニューヨークのブロンクス区で、アフロ·アメリカンやカリビアン·アメリカン、ヒスパニック系の住民のコミュニティで行われていたブロックパーティから生まれたという説もある。ヒップホップという言葉は“お尻(hip)を弾く(hop)”から由来したと言われる。

 ヒップホップは1970年代後半、アメリカニューヨーク州のハーレム街に居住する黒人、あるいはスペイン系の青少年たちによって形成された新しい文化で、アメリカで独自的に創りられた唯一の文化と評価されている。そして1980年代初半まで、ヒップホップはアメリカ以外には知られていなかった。その後、数十年間ヒップホップは全世界に広がり始めた。ヒップホップの広がりに関しても様々な説がある。アメリカに留学や移民で行った人たちが母国に帰って紹介したという説や、音楽市場にヒップホップの曲が売られ始めてたからだという説もある。このように知られたヒップホップは1980年代後半から90年代初半まで質、多様性、影響力と、多方面で注目されるゴールデンエージであった。

 

.ヒップホップの種類

 

 ヒップホップには四大要素がある。ラップ、DJ、ブレイクダンス、グラフィティである。まず、ラップは一般的に1970年代中期のニューヨークにおいて、アフリカ系アメリカ人などをはじめとするエスニック·マイノリティによって生み出されたヒップホップの音楽的側面である。ラップの最も特別な特徴としては、ビットが早いリズムにあわせて自分の考え方や、日常を話すということで、自作自演に対する強いこだわりを持つ。マイクを持ってラップを歌う者はラッパーもしくはMCと呼ばれる。

 次に、DJはターンテーブル(レコード·プレイヤー)を用いた音楽実践などを行う者、あるいは音楽を提供する者である。DJがするDJingはLPレコード·プレイヤーの上で手を前後に動かすことによって発生する雑音を巧みにミキサーし、再構成する独特な音響効果である。

 ブレイクダンスはラップに合わせて踊る、サーカスみたいな踊りである。1990年代初期から青少年たちの間で流行し、自由で、即興的な点が特徴的である。ブレイクダンスは一般的に二つに分けられる。ウエーブ、ホップ系統のスタンディング( Poping, Locking, Girls hip-hopが含まれている )と、ウインドミル、Tomas系統のグラウンドで、一般的にB−boyダンスとして知られている。ブレイクダンスをする者はB-boyと呼ばれる。

 グラフィティは ギリシャのGraffitiの語原で、‘刻む、刻みつける’という意味である。しかし、一般的のGraffitiは、産業の発展とともに発生した‘Air Spray’が市中に広まり、それがヒップホップ文化とともに世界的に Graffiti Artとして知られている。ヒップホップのグラフィティは壁面とか橋脚などにエアスプレーペイントで広大な絵などを描くことをいい、描く者はTaggingと呼ばれる。

 

c.ヒップホップと消費市場

 

 ヒップホップ市場の領域は想像する以上である。アメリカの年間ビルボードチャーター10位以上には、ヒップホップの曲が3〜8曲ほど入っている。世界において最も大きなヒップホップ市場はアメリカである。その他はヨーロッパのフランスで、ドイツもヒップホップは定期的にレコードチャーター10位圏内に上がり、イギリスにはイギリス固有のヒップホップ、Grimeというジャンルがある。

 また、ヒップホップ文化の構成要素の一つとされるラップは、器物破損行為として法的な取締りの対象となるエアロゾール·アートなどに比べて、レコードなどによる商品化が容易であり、対面的なパフォーマンスの文脈を離れても消費されるという特徴を持っていた。(Rose[1994:58])

 このようなレコード市場以外にも、ヒップホップ文化を象徴する大きなT-シャツ、幅広いズボン、野球帽、ナイキ靴、アクセサリーなどの市場が、若者を対象に拡大している。この例として、ニューヨークのMC Jay-Zはラッパ関連商業を辞めてヒップホップ関連商業を始めたし、2002年度の総売上高は約5億ドルである。アメリカのヒップホップ商品を輸入する、スイスのある会社は2003年5千万スイスフラン(約3800万ドル)の売上高を記録した。このようにヒップホップはビジネスとしても成功した。

 

 

3.グローバル文化とヒップホップ

 

a.ヒップホップ以外のグローバル文化の例

 

 一般的にグローバル化している現在には、ヒップホップ以外にも様々なグローバル文化が存在する。グローバル文化はもうすでに我々の生活に深く入り込んでいる。いくつかの例を挙げると、コカ·コーラはマクドナルドとともに、どこの国に行ってもあり、全世界の食品市場で大きな影響を及ばしている。また、衣類市場ではリーバイス、ナイキなどが全世界の若者の間で何年たっても人気を得ている。ディズニーは老若男女を問わず、大人気のものであるしディズニーもエンターテインメントの要素を適用し、ディズニーランドを作り出し、地球を覆う共通文化を作り出した。そしてハリウッドも全世界の映画市場で広い領域を占めている。

 

b.グローバル化の危険性

 

 ヒップホップ以外のグローバル文化の例でわかるように、現在グローバル文化といわれるものはほぼアメリカから発生したものであることがわかる。アメリカの文化商品が押し付けがましく、のし歩いていることには、否定しがたいものがあると思われる。そのような、権威主義的支配による文化の伝播は資本主義の特徴である。西洋ないしアメリカの経済は、グローバル化を強めため、資本主義という経済体制を打ち出し世界の経済を支配している。

 グローバル化の不平等が拡大されると、経済的な面だけでなく、情報との接触にも影響が及ぼされる。情報の価値が大きな存在として見られている現在においては、情報を得ることができる人と、得られない人とに分かれ、国民の間に不平等をまき起こす。

 また、もう一つの問題とは、文化帝国主義論に底流している議論で、受容諸国―多くは発展途上国―のまともな文化が、外来の、にせの文化を押し付けられることによって衰退するというものである。少なくとも暗黙に、文化とはその国の国民的な視点から定義されうるものであって、この限りでは統合的で同質的なものであるということである。すると興味深いことに、誰が国民の文化を規定し、代弁しているかという困難な問題が起こる。文化帝国主義の脅威から自国の文化的アイデンティティを守ろうとすると、ナショナル·アイデンティティとは個別的なものであることを強調せざるをえなくなる。(Tomlinson[1997])

 

c.ローカルなヒップホップ

 

 ロジャー·ウィリス(Wallis, Roger) とクリステル·マルム(Malm, Krister)は、特に1970年代以降のポピュラー音楽は、特定の民族集団などに起源を持たない脱国家的音楽文化(transnational music culture)としての特徴を有していると述べた。さらに、特定の起源を持つとされる音楽も「その音楽が本来持っていた特徴の大部分」が「取り除かれ」る過程を通して、脱国家化するという(Wallis, Malm[1984=1996:332])。

 これに対し、ジョージ·リプジッツ(Lipsitz, George)は、ウィリスとマルムの議論とはやや異なった形で、ローカルな音楽実践に注目する。ポピュラー音楽のグローバル化は、ローカルなアイデンティティや連携を消失させるものではなく、むしろ「空間の再組織化やローカルな経済の変容」をもたらすものであるという(Lipsitz[1994:5])

 リプジッツの議論のように、ラップは地域性に対する強いこだわりを持つ。つまり、実践者の出身地や活動場所によってラップの歌詞の内容は異なる。アメリカにおいて黒人はアメリカにつれてこられた奴隷たちで、今もアメリカに住んでいるその人たちの子孫は含まれない。彼らは社会から受ける差別による痛みとか悩みなどを歌う。一方、韓国や日本のヒップホップは学校問題とか家庭問題、政治に対する批判を歌ったものが多い。このような国家間の地域性の差異もあるが、国家内の地域性によっても十分違ってくる。アメリカ内には東部から西部に至るまで、各州によって数十種のヒップホップが存在するのだから。

 

 

V.結論

 

 グローバル化によって、全世界的で国家間の差がなく、一律的な規格、規範、価値観が通用していくことで、ヒップホップがグローバル化による文化といえるのか、という疑問はあると思う。しかし、私は、ヒップホップはグローバル化によって国境を越える一つの文化であると思う。実際、ヒップホップも、国家によってハンバーガーの味が違うマクドナルドのように、ローカルな要素を持っている。しかし、私はローカルな変化もグローバル化によって生まれてきた一つの現象だと思う。アメリカ内でも地域性は存在するのに、国家間の間に地域性が存在しないとはいえないからである。そのため、グローバル化という定義には、ローカル化が底流にある。ヒップホップは文化としての多様な面ももっており、社会の一員によって選ばれ、民族の特徴的な面も持っているため、文化といえる。 そのため、グローバル文化は国家間の差異の存在を認める全世界的なものであり、ほぼ同じ規格、規範、価値観を通用させることであると定義したい。

 

 

W.参考文献

 

木本玲一 『グローバリゼーションと音楽文化』 勁草書房、2009

デヴィッド·ヘルド編 『グローバル化とは何か−文化、経済、政治』 法律文化社、2002

R.ロバートソン編 『グローバリゼーション−地球文化の社会理論』東京大学出版社、1997

Matt Mason編 『디지털 해적들의 상상력이 돈을 만든다살림Biz2009

이한주세계적 열풍, Hip-Hop 패션시장KOTRA2003

Tomlinson.John 『グローバリゼーション−文化帝国主義を超えて』青土社、1999

Wallis.Roger 『小さな人々の大きな音楽』現代企画室、1984